PMBOK®︎ガイド 第7版 もうじき日本語版もリリース!

こんにちは、システム開発グループの鈴木です。
今回はPMP®︎ホルダーらしく、PMBOK®︎ガイドの最新、第7版についてのお話です。
7/1から英語版のPDFが提供されており、日本語版PDFは10月に提供予定です(書籍は11月予定)。

※本記事の日本語の用語は、英語版の内容から第6版を参考にそれらしい日本語に訳したものです。提供予定の日本語版の正式な用語と異なる場合もありますのでご了承ください。

PMBOK®︎ガイドって何?

PMBOK®︎ガイドは、「Project Management Body of Knowledge(プロジェクトマネジメント知識体系)」の略で、ソフトウェア開発や建設、製造といった業種に限らず、すべての業種のプロジェクトに適用できる汎用的なプロジェクトマネジメントに関する知識をまとめたものです。

プロジェクトマネージャが知っておくべき知識をまとめたガイド「プロジェクトマネジメント知識体系」と、プロジェクトマネジメントのための標準としてISO(国際規格)/ANSI(米国工業規格)の形式にまとめた「プロジェクトマネジメント標準」から構成されます。

PMI(米国プロジェクトマネジメント協会)が発行しており、プロジェクトを取り巻く急速な技術の進歩と、組織や市場の変化に迅速に適応する必要性から、4年毎に世界中の実務に携わるプロジェクトマネージャからフィードバックを受けて改訂しています。

なお、PMIの会員になると、PMIサイトから各言語版PMBOK®︎ガイドのPDFがダウンロードできます。

第7版の概要

今回の第7版で大幅な改訂というか構成の変更をしており、第6版までをみている人は、目次構成をみて、これはPMBOK®︎ガイドなの?とビックリするかもしれません。

第6版までのPMBOK®︎ガイドが「成果物」に焦点を置いていたのに対し、第7版では「価値(価値提供)」に焦点が置かれるようになりました。

また、従来は「プロセス」としてプロジェクトマネジメントのHowTo的な内容をまとめていましたが、これを辞めて「プリンシプル(原則)」として概念や考え方をまとめた内容になりました。

それでは、第6版と第7版でどのように構成が変更されたかを見てみましょう。

PMBOK第6版と第7版の構成比較

  • プロジェクトマネジメント標準では、価値提供のための仕組み(System of Value Delivery)として、プロジェクトが価値を創造する方法など、価値提供についての記述が新たに追加されました。
  • 立ち上げ、計画、実行、監視・コントロール、終結という「5つのプロセス群」が無くなり、「プロジェクトマネジメントにおける12の原則」が新たに追加されました。
  • 「10の知識エリア」が無くなり、「8つのパフォーマンス・ドメイン」が新たに追加されました。
  • 「ITTO(インプット、ツールと技法、アウトプット)」が無くなり、「モデル、手法、成果物」として1つの章でまとめて簡素な説明になりました。
  • 第6版のITTOは継続して参照できるように「PMI standards+™️」サイトにて提供されています。第7版の「モデル、手法、成果物」の具体的な適用方法なども、このサイトで今後提供される予定です。

プロジェクトマネジメント標準と12の原則

プロジェクトマネジメント標準では、プロジェクトマネジメントの行動指針として、次のような「12の原則」(Principles of Project Management )を記載しています。

原則1: スチュワードシップ(Stewardship)
Be a diligent, respectful, and caring steward
勤勉で、敬意を払い、思いやりのあるお世話係であること
原則2: チーム(Team)
Create a collaborative project team environment
協力的なプロジェクトチームの環境を作る
原則3: ステークホルダー(Stakeholders)
Effectively engage with stakeholders
ステークホルダーと効果的に関わる
原則4: 価値(Value)
Focus on value
価値(の提供)を重視する
原則5: システム思考(System Thinking)
Recognize, evaluate, and respond to system interactions
全体を俯瞰し、システムの相互作用を認識し、評価し、対応する
(※システム:個々の要素が相互に影響しあいながら、全体として機能するまとまりや仕組みのことでITシステムのことではない)
原則6: リーダーシップ(Leadership)
Demonstrate leadership behaviors
リーダーシップを行動により示す
原則7: テーラリング(Tailoring)
Tailor based on context
状況に応じたアプローチの調整
原則8: 品質(Quality)
Build quality into processes and deliverables
プロセスや成果物に品質を組み込む
原則9: 複雑性(Complexity)
Navigate complexity
複雑さを克服する
原則10: リスク(Risk)
Optimize risk responses
リスクへの対応を最適化する
原則11: 順応性とレジリエンス(Adaptability and Resiliency)
Embrace adaptability and resiliency
適応力と回復力を身につける
原則12: 変更(Change)
Enable change to achieve the envisioned future state
思い描いた未来を実現するために、変化を受け入れられるようにする

この「12の原則」は、次に説明する「8つのパフォーマンス・ドメイン」についての行動をする上でも行動指針となるものです。

プロジェクトマネジメント知識体系と8つのパフォーマンス・ドメイン

プロジェクトマネジメント知識体系では、効率的にプロジェクトの成果を上げるために不可欠なポイントを8つの分野に分けてまとめています。この分野のことをパフォーマンス・ドメインといいます。

8つのプロジェクト・パフォーマンス・ドメイン

なお、「計画(Planning)」といった6版までのプロセス群に近いものや、「ステークホルダー(Stakeholders)」といった知識エリアに近いものもあり、6版までを知っている人は、やや混乱するかもしれません。

それでは例として、測定パフォーマンス・ドメインの内容について目次構成をみてみましょう。

測定パフォーマンス・ドメインの目次構成

各パフォーマンス・ドメインで共通の構成として、

  • このパフォーマンス・ドメインとは
  • このパフォーマンス・ドメインを実行することで期待される成果

を冒頭で説明しています。

測定パフォーマンス・ドメインの冒頭説明は以下のように記載しています。

測定パフォーマンス・ドメインとは
「プロジェクトのパフォーマンスを評価し、許容可能なパフォーマンスを維持するための適切なアクションを実行するアクティビティと機能」についてまとめている

第6版までの「監視・コントロール・プロセス群」に近い説明ですね。

測定パフォーマンス・ドメインにより期待される成果
  • 信頼できるプロジェクト状態を把握できる
  • 意思決定を促進させるデータを提供できる
  • プロジェクトのパフォーマンスを最適にするための適切かつタイムリーなアクションが実行できる
  • 信頼できる評価と予測に基づくタイムリーな意思決定と情報提供により、目標を達成し、ビジネス価値を創造できる

ちなみに、「測定の落とし穴 (Measurement Pitfalls)」、とても気になるタイトルです。この節では、以下のようなメトリクスにまつわる落とし穴について記載しています。

測定の落とし穴1: ホーソン効果(Hawthorne effect)
何かを測定するという行為そのものが、行動に影響を与える。
そのため、測定基準の設定には注意が必要。
【例】
プロジェクトチームの成果物の生産量だけをメトリクスにすると、プロジェクトチームは、顧客満足度の高い成果物を作ることよりも、大量の成果物を作ることに注力するようになる
測定の落とし穴2: バニティーメトリック(Vanity metric)
測定データは出てくるものの、意思決定には役立ない指標のこと。
【例】
ウェブサイトのページビューを測定しても、それだけでは新規閲覧者の数を把握するには役立たない。
測定の落とし穴3: 士気の低下(Demoralization)
達成不可能な指標や目標を設定した場合、目標を達成できないことが続くと、プロジェクトチームの士気が低下する可能性がある。
意欲的な指標を設定することは構わないが、非現実的な目標や達成できない目標は、逆効果になる可能性がある。

この3つ以外にもいくつか落とし穴が紹介されています。

第6版までは失敗事例集的なまとめは無かったのでとても興味深いですね。

プロジェクトマネジメントに求められるもの

PMBOK®︎ガイドは前述のとおり、定期的に改訂され、発行された時期、またはその先でより良いと思われるプロジェクトマネジメントの慣行をまとめています。ということは、最新版を見れば現在のプロジェクトマネジメントに何が求められているかがわかるということになります。ここまでPMBOK®︎ガイド 第7版についてご紹介してきましたが、その内容から現在プロジェクトマネジメントに何が求められているかを少し考えてみたいと思います。

第7版より変更された内容の中でも大きなものの1つが、プロジェクトマネジメントでは、「成果物を提供することより、価値を提供することを重視する」ということです。

プロジェクトには必ず背景・目的があり、それは企業などの母体組織の組織戦略と目標達成のための手段であり、最終的には組織のビジョンやミッションを実現するためにあります。

プロジェクトとその背景にあるビジョンなどのピラミッド構造

価値を提供するためには、目の前のプロジェクトに対する視点だけでなく、その背景・目的となる組織目標、そして、ビジョンやミッションといった、組織として大切にしている思いをより意識することがとても重要です。

また、プロジェクトを取り巻く環境、制約・前提条件は常に変化し続け、要件自身も変化していきますので、変化を柔軟に受け入れ、適応していくことも求められます。

「価値を届ける」「変化を受け入れて素早く適応する」、ますます、アジャイル的な概念が現在のプロジェクトマネジメントでは強く求められてきているのではないでしょうか。

最後に

正直な話、PMBOK®︎ガイドを見ただけでは、プロジェクトマネジメントで具体的に何をしたら良いかというのはわかりづらいと思います。

ただ、どんなことに気をつけないといけないか、見落としていることがないかは、第7版になってよりわかりやすくなったように感じます。

PMBOK®︎ガイド第7版の日本語版が提供されましたら、また一読して、デジタルコンテンツなどで具体的な手法を調べて、いろいろ試してみながら、良い塩梅のマネジメント方法に繋げていければと思います。

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