中国の大連に開発センターを開設して3ヶ月経過した現状と今後

はじめに

みなさま、こんにちはCTOの大神です。
アトラスのFaceBookページではすでにお知らせしていますが、中国の遼寧省大連市に開発センターを開設して早くも3ヶ月が経過しました。2018年11月に大連帝邦科技発展有限公司とODC(オフショア開発センター)を開設しました。開設当初は6名体制でしたが、現在は1名増員して7名で日本の開発チームと共にConfitの開発業務を担当しています。
日本の開発チームとの共同作業やシステムの理解、アトラスの開発プロセスに慣れるまで苦労したものの、2019年1月に最初のConfitバージョンアップのプロジェクトが完了しました。現在は次のバージョンアップに着手している状況で、順調に開発を進めています。
大連開発センターを開設する経緯と現状、今後やっていくことを紹介します。

大連開発センター

アトラスでは、10年ほど前に同社とオフショア開発をしていましたが、その時のメンバの1人が開発センターのプロジェクトマネージャーを務めています。

ODCとは

オフショア開発センター(Offshore Development Center)と呼ばれるラボ型開発の契約形態です。任意の期間で契約することで、人材をアトラス専用に確保でき、サービスの業務内容や機能仕様などノウハウを蓄積できるメリットがあります。
アトラスでは、継続的にサービスの機能追加や既存機能の改善・拡張をしているので最適な契約形態です。

開発センターを開設した経緯

開発のスピードアップが課題

ConfitやSMOOSYなどはアトラス内で開発していますが、拡張対象の機能やご要望を多く頂いており、開発のスピードアップが課題でした。アトラス内の開発チームでは以前からメンバを増員しようとしていたのですが、日本で開発エンジニアを募集しても、希望通りにメンバを追加できない状況でした。

そんな時にODCの提案

2018年7月に大連帝邦科技発展有限公司のCEOの彭さんからODCを提案いただきました。
ラボ型契約で大連にアトラス専用チームを作り、日本の開発チームのエンジニアがブリッジSEになり直接大連の開発チームに指示を出して、必要に応じて日本と大連を行き来して開発する方式の提案です。
コミュニケーション手段が豊富な現在では、日常的にSlackやSkype、GitHub、Googleドライブ、DocBaseなどのツールを使用してコミュケーションを取ることがでます。また、必要に応じて日本のエンジニアが大連の開発チームに行き、機能仕様の詳細の説明、技術的な説明をするようにしていけば、日本の開発チームと同じプロセスで開発できることが想像できました。

ODCでの開発方針

大連の開発チームでも、現在のアトラス内と同じ開発プロセスで進めるようにしました。アトラス内でも日常的にテレワークをしており、同じ場所で作業していないので、大連で作業する人がいたとしても意識することなくこれまでと同じように開発を進められると考えました。
しかし、日本の開発チームでの開発プロセスは社内で定期的に顔を合わせることができる環境での開発に最適化されている傾向もあったので、現在の開発プロセスを大連チームに合わせてルール化や文書化しました。
また、大連の開発チームが慣れるまでは、ある程度機能仕様を確定させられる機能開発を担当するようにしました。日本の開発チームは、近くにいるマーケティング担当や導入担当に、開発中でもすぐに仕様確認できるので、開発を進めながら仕様を調整していく機能の開発を担当するようにしました。

開発センターの開設と開発業務の開始まで

情報セキュリティとインターネット検閲

中国では政府のインターネット検閲により、アクセスできないサイトが数多くあります。
特にアトラスは設計書などにGoogleのG Suiteを使用しているのでVPNが必須です。開発環境のサーバにはアトラス社内からしかアクセスできないようにしているので、日本でのテレワークでも使用しているアトラスのVPNに常に接続できるようにしました。
VPNで接続すると常に暗号化されるのでセキュアな状態を保つことができます。

情報セキュリティ教育と開発プロセスの説明

2018年11月の開所から1ヶ月ほど時間をかけて、情報セキュリティ教育や開発プロセスの説明など、開発業務に入る前の準備、開発業務でのコーディングからプルリクエスト作成まで各種手順確認と訓練を実施しました。
開発センターは、日本向けの開発プロジェクト経験が豊富なメンバが多いので、ISMS基準の情報セキュリティには問題ありませんでしたが、アトラスでの開発プロセスで使用している開発ツール類は使用経験がなかったので、慣れるのに1ヶ月ほど時間がかかりました。

開発センターでの開発状況

2018年12月から2019年1月末までの2ヶ月間でConfitのバージョンアップのための機能を拡張して、2019年2月26日に新バージョンをリリース予定です。日本の開発チームは2019年1月18日に新バージョンをリリースしたので、大連と日本の開発チームでそれぞれのバージョンアップの開発に着手でき、拡張スピードは当社比で1.8倍になりました。

日本語でのコミュニケーションの課題

中国人エンジニアとの共同作業での課題は日本語でのコミュニケーションにあると思っていましたが、大連の開発チームは、経験15年以上のベテランエンジニア2名と経験2、3年の若手エンジニア5名のチームです。ベテランエンジニアは日本滞在経験があり、1人は以前アトラスで開発業務に携わっていたので、日本語のコミュニケーションが問題になることはありませんでした。
ソースコードのコメントは、多少日本語が正しくなくても、コードレビュー時にチェックして修正してもらうようにしていますので、特に問題になることはありません。
また、常にオフィスカメラを接続して毎日朝礼したり、いつでも仕事状況を確認したりできるようにしています。


大連から見た日本のオフィス

日本から見た大連のオフィス

大連への出張頻度

アトラスのエンジニアが大連の開発センターに必要に応じて出張しており、わたしは3ヶ月間で4回出張しました。日常はSkypeで進捗確認や課題確認などでコミュニケーションをとり、バージョンアップ内容や開発プロセスを説明する場合など、対面で説明した方が良い場合に出張します。

回数 時期 目的 内容
1 10月17-19日 事前準備 VPN接続確認、PMへの事前説明など
2 10月31-11月7日 開設 業務開始の各種教育、各種手順の説明
3 12月4-8日 拡張仕様の説明 初回バージョンアップの説明、機能仕様の説明
4 1月7-11日 開発プロセスの課題確認  試験工程の説明、開発プロセスの課題確認と解決

現状では、月1回のペースで出張していますが、今後は2ヶ月に1回ぐらいのペースにできそうです。また、出張する際に共同で作業するエンジニアも同行して顔を合わせて仕事して、夜は宴会で乾杯して親睦を深めることで、以降の業務がぐっとやりやすくなります。

夜は宴会で乾杯

今後の開発センターでやっていくこと

日本の開発チームは、Confitなどのサービスの機能開発以外にも、ユーザからの問い合わせのログ調査やサーバ監視、エラー監視、エラーによるホットフィックスの対応、サーバ、ミドルウェアの管理など、開発以外の作業を多く担当していますが、大連の開発チームは機能開発をメインに担当していく予定です。
日本の開発チームがもう1つ大連にあるような状態にしていき、必要な拡張や頂いたご要望の対応など安定して、スピードアップしてご提供できるようにしていきます。
ODCに興味がある方は、大連帝邦科技発展有限公司に問合せしてみてください。